【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 現に、学生時代はしおらしかった男爵令嬢のグループが、つまづいたフリをしてマリアにグラスの水をかけた。
 今日のために仕立てたマリアのドレスは、胸元からスカートまでぐっしょりと濡れてしまった。

「失礼しました、マリア様。高嶺の花ならいざ知らず、一人でテーブルを占領している立場を弁えないご令嬢は目に入らなかったのです。お許しくださいませ」

 令嬢らしい言い回しだが、直訳すると『第一王子にフラれたお前は、もはや高嶺の花ではなく負け組だ。今までのように振る舞えると思うなよ』である。

 育ちはいいのに口が悪い。いや、悪いのは性格か。
 マリアは、水を拭おうとする従者を手で制して、ゆったりと立ち上がった。

「かまいませんわ。ちょうど、ドレスを着替えたいと思っておりましたの」
「あら、もうお帰りになるんですの? これからご令息方との歓談ですものね。汚れたドレスでは、いくら公爵家のご令嬢といえど恥ずかしくて出席できないわよね」

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