【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
「非常事態、とは?」

 不安になるマリアに、ヘンリーはにっこりと微笑みかけた。
 垂れぎみの目尻に皺がよって、善良な人物に見える。

「心配しないで。高嶺の花が宮殿に来て、第二王子の寝室に入ったきり出てこないって、さっそく評判になってるだけ。どちらも箱入りかと思っていたら、やるねー」
「彼女は、俺の看病をしていただけだ」

「表向きは何とでも言えるだろうけどさ。コレ、以外と最悪の状況だよ? 婚約式典もまだの二人が一線を越えたって噂が立ったら、悪く言われるのはご令嬢の方。王子サマの結婚相手を決めるのは国王サマで、国王サマは聖女ネリネに心酔してて、二人の心証が悪くなってるときにコレ。この意味、分かるよね?」
「分かっておりますわ、ヘンリー様」

 国王がこの結婚に待ったをかけたら、再度、認めてもらうのは難しい。

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