【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 マリアの心の声が聞こえたかのように、王妃はうんざりと眉を下げた。

「古宿の主人は、通り過ぎる旅人を引きとめるために、娘に『嵐が来る』と言わせていたにすぎないわ。けれど、陛下は彼女に預言の力があると信じ込んでしまわれたの。いきなり小さな女の子を連れてこられて、『王子たちと共に育てよ』なんて言われた私は本当に困ったわ。しかもあの子、ちやほやされる内に王族になったと勘違いしたようで、我が儘放題のカンシャク持ちな娘になってしまったの。毎月、一つの預言を行っているけれど、それもろくな内容ではないのよ」

 聖女の預言は、実に簡単だ。
 地方で長雨が降るとか、王都で盗みが起きるとか。
 少し前には、辺境の貴族が反乱を企てているとか適当なことを言って、大勢の騎士をレンドルム領に向かわせる騒ぎのきっかけになった。

(辺境伯にそういった兆候も、戦意もないと貴族は皆知っていたから、真に受けなかったのよね)

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