【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 騒ぎを収めたのは、マリアの父――ジステッド公爵による仲介だったので、マリアも事の顛末をよく知っている。

「王妃殿下は、聖女ネリネの預言を信じておられないということですね」
「当たり前でしょう。レイノルドの側近や国王の周りの有能な者たちは皆そうよ。でも、あまり考えるのが得意ではない侍女やアルフレッドは信じて怯えているようね。貴方は、彼らのような文句だけは言う大勢を相手にして、これから戦わなければならないの。……その度胸があれば、少しは抗えるでしょう」

 王妃が目で合図を送ると、執事がマリアの前にあった二客の紅茶を、新しいカップと取り替えてくれた。

 マリアは、試されていたのだ。
 信憑性のない預言に騒ぐだけの人々に、認められるまで戦えるかどうかを見定めるために。

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