【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 マリアはというと、別室でテーブルに用意されたアップルシードルを味わっていた。周りには誰もいない。正真正銘の一人きりだ。

 レイノルドに『参加はするが姿を見られたくない』とお願いをしたところ、ヘンリーが気を利かせて用意してくれたのである。
 馬車も遠くで降り、マリア一人だけ勝手口から入る徹底ぶりだった。

 今も頭から薄布をかぶり、万が一、誰かが部屋に入って来ても顔を隠せるようにしている。
 
(さすがに、わたくしが参加したら騒ぎになってしまうもの)

 レイノルドは、貴族が大勢いる広間の方にいる。ヘンリーと顔見知りの下町の悪友たちもまばらに参加しているので、最後の語らいをしているのだ。

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