【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
「クレロ様も、こちらにいらっしゃったのですね」
「一階席で見ていました。しかし、観客はボックス席にいらっしゃるマリアヴェーラ様に夢中でしたよ。特等席に王族がいらしているのに、ジステッド公爵令嬢への賞賛ばかりで……」
「本当のことをおっしゃってくださいませ。わたくし、悪評を立てられるのにはなれておりますの」

 破滅の預言は宮殿内にとどまらず、人づてに貴族にも届いている。
 素晴らしい劇よりもマリアが話題になっているのは、一人歩きしている噂の方が面白いからだろう。
 クレロは、暗い表情になって溜め息をついた。

「正直に申し上げますと、酷い噂ばかりでした。マリアヴェーラ様がその美貌で第二王子をたぶらかし、王妃も味方につけた。そのせいで、国民がその報いを受けさせられると大声で話す夫人が隣にいたのです」
「お気になさらずともよろしいのに。噂好きの者は、飽きるまで放っておくよりありませんわ」
「ですが……」

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