【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
マリアは、サロンの奥まったところにある個室へクレロを導いた。
曇りグラスで仕切られていて、明かりはランプ一つという薄暗さ。そのため、あまり利用する客はいないから内緒話には打ってつけだ。
「それで、聖女について話したいこととは何でしょう?」
カウンターで受け取ったシャンパングラスを置いたマリアに、クレロは白手袋を脱ぎながら近づく。
「ネリネ様は、私に肖像画を描かせている間、何度も話してくださいました。どうしたら第二王子殿下を手に入れられるか、ずっと考えていたのだと。彼女は、国王の外遊についていった経験があり、とある帝国の妃が描かせた、それはそれは美しい肖像画を見て心を奪われたのだそうです。その肖像画は、まるで魔法でもかけられたようにキラキラと輝いていた。それを思い出して、自分も第二王子に送る『輝く肖像画』を作ろうと思い付かれたのです。そして――私が選ばれた」
手袋から抜かれたクレロの手が、キラリと輝いた。
光っているのは爪の隙間に入り込んだ絵の具だ。
「クレロ様? それは一体――」
「失礼」
「きゃっ!」
曇りグラスで仕切られていて、明かりはランプ一つという薄暗さ。そのため、あまり利用する客はいないから内緒話には打ってつけだ。
「それで、聖女について話したいこととは何でしょう?」
カウンターで受け取ったシャンパングラスを置いたマリアに、クレロは白手袋を脱ぎながら近づく。
「ネリネ様は、私に肖像画を描かせている間、何度も話してくださいました。どうしたら第二王子殿下を手に入れられるか、ずっと考えていたのだと。彼女は、国王の外遊についていった経験があり、とある帝国の妃が描かせた、それはそれは美しい肖像画を見て心を奪われたのだそうです。その肖像画は、まるで魔法でもかけられたようにキラキラと輝いていた。それを思い出して、自分も第二王子に送る『輝く肖像画』を作ろうと思い付かれたのです。そして――私が選ばれた」
手袋から抜かれたクレロの手が、キラリと輝いた。
光っているのは爪の隙間に入り込んだ絵の具だ。
「クレロ様? それは一体――」
「失礼」
「きゃっ!」