【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 ミゼルにも兄が一人いて、跡継ぎに内定している。

 つまりパーマシーは、自分で事業を興すか、分配される貴族年金で慎ましく暮らすより、身を立てる方法はない。

(それで、ろくでもない投資にはまったのね。一発逆転なんてあるはずがないのに)

 リスクなく元手が二倍、三倍になる儲け話など存在しない。そんなものがあるなら、世界中の人々がタスティリヤ王国に来て、富豪になっているだろう。

「ごめんなさい、パーマシー様。お父様には援助をお願いできません……」
「は? きみ、僕が求婚したとき、爵位を継げなくてもかまわない、側で生涯ささえるって言ってくれたじゃないか。あれは嘘だったのか!」
「嘘ではありません。わたしは、今だってパーマシー様のこと……」
「もういい、返せ!」

 苛立った様子のパーマシーは、ミゼルの左手をぐいっと引っ張った。
 薬指にはまった婚約指輪を奪おうとしているのだ。

「――お待ちになって」

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