【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
「わたくし、ゼグレ地方の領主に当時の事情をうかがいましたの。果実が例年になく豊作だったところに、聖女ネリネの預言が届けられたのだそうです。『領内の果樹は移り病に侵されている。少しでも葉が変色した木は、実を残したまま全て切り倒さなければ、やがて領内すべての作物に影響があるだろう。民に知られれば大混乱となるので、決して他言しないように』と――」
これを受けて、ゼグレ領主は領内の果樹をすべて切り倒させた。
もしも穀物にまで病が移ってしまえば、国中が飢饉にさらされて大勢の人が死んでしまうからだ。
果樹を切ったおかげで他の作物には影響がなく、ゼグレ領主はその後、『聖女のおかげで助かった』という感謝状を国王に送っている。
「――それは、ここに記された預言とは違います。『山崩れが起きる』と預言された山の主には、『山肌の木を切ると金塊が出る』という預言が届いていました。金に目がくらんだ主が木をたくさん切ったせいで、山肌は大きく崩れて川をせき止め、大変な被害をもたらしました。『市街が窃盗団に襲われる』と預言した後は、わざわざ他の国で指名手配されていた犯罪者を招き入れ、盗みをさせていました。彼らは魔晶石が狙いなのですぐ隣国へ行ったのだと、犯行を手伝った下町のゴロツキから証言を得ています。他にも、預言のせいで起きた事件や事故が多くありましたわ」
マリアは、預言の書をパタンと閉じて、集まった貴族を見回した。
預言に振り回された覚えのある者たちは、戸惑いや憤りを含んだ目でネリネを見つめている。
これを受けて、ゼグレ領主は領内の果樹をすべて切り倒させた。
もしも穀物にまで病が移ってしまえば、国中が飢饉にさらされて大勢の人が死んでしまうからだ。
果樹を切ったおかげで他の作物には影響がなく、ゼグレ領主はその後、『聖女のおかげで助かった』という感謝状を国王に送っている。
「――それは、ここに記された預言とは違います。『山崩れが起きる』と預言された山の主には、『山肌の木を切ると金塊が出る』という預言が届いていました。金に目がくらんだ主が木をたくさん切ったせいで、山肌は大きく崩れて川をせき止め、大変な被害をもたらしました。『市街が窃盗団に襲われる』と預言した後は、わざわざ他の国で指名手配されていた犯罪者を招き入れ、盗みをさせていました。彼らは魔晶石が狙いなのですぐ隣国へ行ったのだと、犯行を手伝った下町のゴロツキから証言を得ています。他にも、預言のせいで起きた事件や事故が多くありましたわ」
マリアは、預言の書をパタンと閉じて、集まった貴族を見回した。
預言に振り回された覚えのある者たちは、戸惑いや憤りを含んだ目でネリネを見つめている。