【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 まさか玄関で会えるとは思っていなかった。
 びっくりするマリアの手を、レイノルドは、そうするのが当たり前のように取って指にキスをする。

 柔らかく触れる感触に、鼓動がはずむ。

「予定より早かったな。道中、何もなかったか?」
「ええ、何も。レイノルド様は……」

 レイノルドがいつもいる執務室からここまではかなりの距離だ。
 馬車が到着したと一報を受けて移動しては、この速さで姿を現すことは不可能である。

「ひょっとして、ここでわたくしの到着を待っていてくださったのですか?」

 問いかけると、レイノルドの薄い頬にほんのり朱が差した。
 きまり悪そうに目を細めて、歪んだ口元を腕で隠す。

「別にいいだろ。早くあんたの顔を見たかったんだから」

 思いがけない照れ顔に、胸がきゅ~~んと締め付けられた。

 かわいいという言葉をありがたがる男性は少ないだろう。
 でも、今のレイノルドは絶対かわいい。

「わたくし、レイノルド様のそういうところが大好きです」
「どういうところだ」
「いつか教えて差し上げますわ。結婚式の打ち合わせに遅れてしまいますから、早くまいりましょう」

 マリアがレイノルドの手に手を重ねたとき、急に正門の方がざわついた。

「なんだ?」

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