【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 突然、ガシャンと強烈な音がした。顔を向けると、レイノルドが窓際の花瓶をけり倒していた。花瓶は割れて、薔薇模様が美しい絨毯に水が広がっている。

「パーマシーとか言ったか。お坊ちゃまは知らないようだから教えてやる。現物が今は目の前にない。金を預けたらあとで倍にして返してやる。もっと金を集めてくればさらに還元してやる。どれも詐欺師の常套句だ」

 レイノルドは、ソファにどかっと腰かけて、悪党よろしく腕を広げて背にもたれかかった。はだけた黒いコートの血のような色の裏地が、より彼を凶悪な人物に見せていた。

「こういう話は、ある程度の真実を混ぜるものだ。たしかに大陸への魔晶石の流通は増えている。聖教国フィロソフィーの聖王も代替えするらしいし、あたかも詐欺師の言う通りになりそうな気配がある。だが、そうならない気配も同じだけある。俺の読みでは輸出は緩和されない。持ち上がっている儲け話は泡となって消える」

「で、でも、すでに出回っている分があるじゃないか! 王国内では魔法が禁じられているが、第一王子が撤廃するにちがいないんだから、それを確保すれば!!」

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