【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 ふと窓に視線をやると、ちょうどレイノルドとルクレツィアがいる東屋が見えた。

 寄り添う二人の甘い空気は、辺りの空気を輝かせる。
 レイノルドはルクレツィアの髪に触れて微笑む。

 これまでマリアにしてきたように。

(レイノルド様……)

 マリアは、悲痛な表情で窓に手をついた。

 あんなに愛し合っていたのに、今そばには別の女性がいる。

 これまで囁かれた甘い言葉に嘘があったとは思えない。
 だからこそ、心変わりが辛いだのだ。

(いいえ。ただの心変わりではないわ)

 誠実なレイノルドのことだ。マリアに興味がなくなって他の女性に乗り換えるとしたら、きっちり関係を清算してから次に行くはず。

 これは何かの作戦ではないだろうか。
 たとえば、レイノルドが独自にルクレツィアを罠にはめようとしていて、マリアを巻き込まないように冷たくあしらっているとか――

(考えすぎね)

 レイノルドの気持ちが自分に残していてほしいと思うから、裏があるように思えるのだ。

 王妃が言うようにマリアは捨てられた。

「っ……レイノルド様……」

 遠くに見える二人の姿がかすむ。
 せり上がってきた涙は頬に流れ落ちて、ずるずると座り込むようにマリアはその場に泣き崩れた。
< 316 / 446 >

この作品をシェア

pagetop