【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
「お任せください」
控えていたジル、並びに侍女たちによって、マリアは支度部屋に連れ込まれた。
あれよあれよという間に、白くてふわふわのチュールを重ねたデコレーションケーキみたいなドレスに着替えさせられ、頭には苺を模したルビーを縫い付けたヘッドドレスを飾られ、手首はレースのお袖とめとアクセサリーで飾られて、ミゼルが乗ってきた馬車に押し込められていた。
ガタガタと揺れる車窓でも、ミゼルはマリアの手を握って離さなかった。
やがてたどり着いたのは、淡いピンク色の外壁がやたらとファンシーな建物だった。
「ここは……」
「巷で流行のお店なんです。マリアヴェーラ様のご趣味に合いそうなので、いつか一緒に来てみたいと思っていたんですが……。結婚式が終わるまではとこらえていたんですよ」
中に入ると、かっぷくのいいメイドがテーブルに案内してくれた。
女性客ばかりで込み合った店内の壁際には長テーブルが置かれていて、ケーキやチョコレート、スコーン、プリンなど、多種多様なスイーツが山積みになっている。
どれもミニサイズだが全種類食べたらお腹が破裂してしまいそうだ。
メイドはテーブルに「使用中」の札を立てて、テーブルの方を指さした。
「うちはタスティリヤ王国で唯一のスイーツ食べ放題のお店なんですよ。奥のテーブルの料理は食べ放題。飲み物もお好きなものを好きなだけ。あなたならちょっと太っても平気よ。たくさん食べていってね」
メイドにばちんとウインクされて、マリアは恥ずかしくなった。
(わたくし、よほどやつれているのね)
ミゼルは紅茶を注文すると、マリアに待っているように言って一人で料理の方へ向かった。
ティーポットとカップが届いたので砂時計の砂が落ちるのを待っていたら、大きなお皿を両手にミゼルが戻ってきた。
「全種類持ってきました!」
ミゼルがお皿を両方とも自分の前に置いたので、マリアはびっくりした。
生クリームと苺のケーキを初め、艶やかなオペラやフルーツタルト、ピンクや水色のマカロンやダイスクッキーなど一口サイズの甘い誘惑が、お皿の底が見えないほどびっしりと盛られていた。
「わたくし、こんなに食べられませんわ」
「お好きなものだけでいいんです。召し上がってください」
向かいの席でミゼルが微笑む。
食べるまで解放してもらえなさそうなので、マリアはフォークを手に取って苺のケーキに刺した。
口に入れると、目がぱちっと開いた。
「おいしい……」
とろけたクリームと苺の甘酸っぱさが口いっぱいに広がる。
まるで、生まれて初めて味付きの食べ物を口に入れたように感動がわき上がってきて、影が差していたローズ色の瞳がキラキラと輝いた。
(こんな素晴らしいケーキがこの世にあるの!?)
控えていたジル、並びに侍女たちによって、マリアは支度部屋に連れ込まれた。
あれよあれよという間に、白くてふわふわのチュールを重ねたデコレーションケーキみたいなドレスに着替えさせられ、頭には苺を模したルビーを縫い付けたヘッドドレスを飾られ、手首はレースのお袖とめとアクセサリーで飾られて、ミゼルが乗ってきた馬車に押し込められていた。
ガタガタと揺れる車窓でも、ミゼルはマリアの手を握って離さなかった。
やがてたどり着いたのは、淡いピンク色の外壁がやたらとファンシーな建物だった。
「ここは……」
「巷で流行のお店なんです。マリアヴェーラ様のご趣味に合いそうなので、いつか一緒に来てみたいと思っていたんですが……。結婚式が終わるまではとこらえていたんですよ」
中に入ると、かっぷくのいいメイドがテーブルに案内してくれた。
女性客ばかりで込み合った店内の壁際には長テーブルが置かれていて、ケーキやチョコレート、スコーン、プリンなど、多種多様なスイーツが山積みになっている。
どれもミニサイズだが全種類食べたらお腹が破裂してしまいそうだ。
メイドはテーブルに「使用中」の札を立てて、テーブルの方を指さした。
「うちはタスティリヤ王国で唯一のスイーツ食べ放題のお店なんですよ。奥のテーブルの料理は食べ放題。飲み物もお好きなものを好きなだけ。あなたならちょっと太っても平気よ。たくさん食べていってね」
メイドにばちんとウインクされて、マリアは恥ずかしくなった。
(わたくし、よほどやつれているのね)
ミゼルは紅茶を注文すると、マリアに待っているように言って一人で料理の方へ向かった。
ティーポットとカップが届いたので砂時計の砂が落ちるのを待っていたら、大きなお皿を両手にミゼルが戻ってきた。
「全種類持ってきました!」
ミゼルがお皿を両方とも自分の前に置いたので、マリアはびっくりした。
生クリームと苺のケーキを初め、艶やかなオペラやフルーツタルト、ピンクや水色のマカロンやダイスクッキーなど一口サイズの甘い誘惑が、お皿の底が見えないほどびっしりと盛られていた。
「わたくし、こんなに食べられませんわ」
「お好きなものだけでいいんです。召し上がってください」
向かいの席でミゼルが微笑む。
食べるまで解放してもらえなさそうなので、マリアはフォークを手に取って苺のケーキに刺した。
口に入れると、目がぱちっと開いた。
「おいしい……」
とろけたクリームと苺の甘酸っぱさが口いっぱいに広がる。
まるで、生まれて初めて味付きの食べ物を口に入れたように感動がわき上がってきて、影が差していたローズ色の瞳がキラキラと輝いた。
(こんな素晴らしいケーキがこの世にあるの!?)