【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
「大公の三男だ。留学している間の親友だったが、結婚を機に連絡をやめた。留学中は彼のおかげで楽しく過ごせたんだ。宮殿に招かれて大公に謁見したこともあるんだぞ。魔法で彩られた宴は圧巻だった」
シャンデリアは星のように輝き、オーケストラピットは宙に浮き、人々のドレスやジャケットは会う人にあわせて色を変える。
タスティリヤ王国では禁じられた魔法の強みを思い知らされたという。
「私は親友を質問攻めにした。魔法は何ができて、何ができないか。何が許されて、何が禁止なのか。熱心に尋ねる私に、彼は絶対に使ってはならない魔法があると教えてくれた。それが記憶の改竄だ」
まだどんな魔法も禁止されていなかった頃、貴族に酷い扱を受けていた魔法使いが、主の記憶を書き換えた。
自分を貴族その人だと思わせて、使用人として働かせたのだ。
私財を食いつぶされたその貴族は没落し、一家は離散したという。
「それ以降、ルビエ公国の貴族たちは記憶を操られるのを恐れている。ルビエ公国内では魔法使いを厳しい管理下に置いて、自由に魔法を使わせないようにしているので、さほど心配はないらしい」
「管理下とはどういうことですか?」
「有体にいえば、魔法使いは人ではなく、王侯貴族の所有物だということだ。彼らは靴や杖のような物と変わらないんだ、あの国では。後から知ったが、親友がいつも連れていた無口な従者も魔法使いだった」
泣きも笑いもしない人形のような男が、親友に尽くして使い捨てられるのを間近で見て、ダグラスは魔法に否定的になった。
「タスティリヤ王国がここまで平和なのは、ひとえに魔法の使用を許可していないためだ。それが国内で、しかも次期国王に使われた可能性があるとなれば非常事態だ。マリアヴェーラ」
ダグラスは磨いていた銃を手に立ち上がった。
兄は狩猟の名手でああり、これまでに何百頭もの鹿や熊を屠っているだけあって、銃身をすべらせて床に立てる仕草は流れるようだった。
「我がジステッド公爵家のため、そしてタスティリヤ王国のために、レイノルド王子殿下の寵愛を取り戻せ。できなければ、私に撃ち殺されると思え」
「ふふふ、お兄様は口が悪いこと」
シャンデリアは星のように輝き、オーケストラピットは宙に浮き、人々のドレスやジャケットは会う人にあわせて色を変える。
タスティリヤ王国では禁じられた魔法の強みを思い知らされたという。
「私は親友を質問攻めにした。魔法は何ができて、何ができないか。何が許されて、何が禁止なのか。熱心に尋ねる私に、彼は絶対に使ってはならない魔法があると教えてくれた。それが記憶の改竄だ」
まだどんな魔法も禁止されていなかった頃、貴族に酷い扱を受けていた魔法使いが、主の記憶を書き換えた。
自分を貴族その人だと思わせて、使用人として働かせたのだ。
私財を食いつぶされたその貴族は没落し、一家は離散したという。
「それ以降、ルビエ公国の貴族たちは記憶を操られるのを恐れている。ルビエ公国内では魔法使いを厳しい管理下に置いて、自由に魔法を使わせないようにしているので、さほど心配はないらしい」
「管理下とはどういうことですか?」
「有体にいえば、魔法使いは人ではなく、王侯貴族の所有物だということだ。彼らは靴や杖のような物と変わらないんだ、あの国では。後から知ったが、親友がいつも連れていた無口な従者も魔法使いだった」
泣きも笑いもしない人形のような男が、親友に尽くして使い捨てられるのを間近で見て、ダグラスは魔法に否定的になった。
「タスティリヤ王国がここまで平和なのは、ひとえに魔法の使用を許可していないためだ。それが国内で、しかも次期国王に使われた可能性があるとなれば非常事態だ。マリアヴェーラ」
ダグラスは磨いていた銃を手に立ち上がった。
兄は狩猟の名手でああり、これまでに何百頭もの鹿や熊を屠っているだけあって、銃身をすべらせて床に立てる仕草は流れるようだった。
「我がジステッド公爵家のため、そしてタスティリヤ王国のために、レイノルド王子殿下の寵愛を取り戻せ。できなければ、私に撃ち殺されると思え」
「ふふふ、お兄様は口が悪いこと」