【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
17話 たぐりよせ比翼連理
ルクレツィアがタスティリヤ王国にやってきてから三週間。
世間知らずの公女殿下は宮殿内で話すことにも飽きて、レイノルドを外歩きに連れまわすようになった。
今晩は、王立劇場で開かれる歌劇鑑賞だ。
夜会用の青い礼服を身にまとい、久しぶりに劇場に入ったレイノルドは、なぜか猛烈に懐かしくなった。
(急に何だ?)
ロビーに下げられたクリスタルのシャンデリア。
入って中央にあるワイン色の絨毯を敷いた大階段。
柱に彫られた音楽の女神たちの像。
どれも見知った内装で思い出深くはない。
首をひねっていると、同行したルクレツィアが不満そうに腕に引っ付いてきた。
「レイノルド様、どうなさったんです?」
「いや……気のせいだ」
レイノルドはエスコート相手のルクレツィアに視線を落とした。
側近は、彼女を妖精のようだと評する。
浜辺に繰り返し押し寄せる波のように布を重ねた水色のドレスも、華奢な首に巻いた三連パールのネックレスも、彼女の真珠のような肌や白い髪に現れた天使の輪を際立たせる存在でしかない。
ルクレツィアが微笑めば、世の男は簡単に落ちる。
だが。
(俺は好きになれない)
レイノルドは、掴まれている腕とは反対の手でそっとルクレツィアの指をはがした。
「あまり引っ付かないでくれるか」
毎日のようにべたべたされてうんざりだ。
彼女と結婚したらこれが一生続くのかと思うと憂うつになる。
顔を背けて距離を取ると、ルクレツィアはしゅんと肩を落とした。
「申し訳ありませんでした。一緒にお出かけできるのが嬉しかったんです……」
声が震えている。泣きそうなのか。
(面倒だが、相手は公女だ)
世間知らずの公女殿下は宮殿内で話すことにも飽きて、レイノルドを外歩きに連れまわすようになった。
今晩は、王立劇場で開かれる歌劇鑑賞だ。
夜会用の青い礼服を身にまとい、久しぶりに劇場に入ったレイノルドは、なぜか猛烈に懐かしくなった。
(急に何だ?)
ロビーに下げられたクリスタルのシャンデリア。
入って中央にあるワイン色の絨毯を敷いた大階段。
柱に彫られた音楽の女神たちの像。
どれも見知った内装で思い出深くはない。
首をひねっていると、同行したルクレツィアが不満そうに腕に引っ付いてきた。
「レイノルド様、どうなさったんです?」
「いや……気のせいだ」
レイノルドはエスコート相手のルクレツィアに視線を落とした。
側近は、彼女を妖精のようだと評する。
浜辺に繰り返し押し寄せる波のように布を重ねた水色のドレスも、華奢な首に巻いた三連パールのネックレスも、彼女の真珠のような肌や白い髪に現れた天使の輪を際立たせる存在でしかない。
ルクレツィアが微笑めば、世の男は簡単に落ちる。
だが。
(俺は好きになれない)
レイノルドは、掴まれている腕とは反対の手でそっとルクレツィアの指をはがした。
「あまり引っ付かないでくれるか」
毎日のようにべたべたされてうんざりだ。
彼女と結婚したらこれが一生続くのかと思うと憂うつになる。
顔を背けて距離を取ると、ルクレツィアはしゅんと肩を落とした。
「申し訳ありませんでした。一緒にお出かけできるのが嬉しかったんです……」
声が震えている。泣きそうなのか。
(面倒だが、相手は公女だ)