【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい

24話 第二王子のしんかい

 屋外の稽古場で剣を振るう騎士たちを、レイノルドは騎士団長と並んで見守っていた。

 冷えた空気に、白く立ち上る息。
 雪こそ降らないが気温はもう冬と呼んで遜色ない。

 今年入った団員は、長剣や槍などさまざまな武器を手にしている。騎士団は冬に重点的に稽古を入れるので、今は定まらない形も冬を超えると見違えるようになる。

 レイノルドはつたない剣筋に自分を重ね合わせた。
 次期国王とはいえ、実際は来襲した公女に振り回される青二才だ。

「俺はルビエ公国に行くことになった。手練れを数名連れていきたい」

「では、ヘンリー・トラデスを筆頭に、殿下の役に立ちそうな者を編成しましょう。私ほどではないですが、盾になりそうな大男や曲芸ができる者もいますよ」

 分厚い胸筋を叩いて力自慢をする団長に、レイノルドは大真面目に尋ねる。

「魔法に詳しい騎士はいるか? ルビエ公国に行った際に対処できる人員がほしい」
「我が国では、見たことも聞いたこともない者ばかりかと……」

 言葉をにごされてしまった。
 当然だと思いつつ、レイノルドは落胆を隠せなかった。

「そうだよな。無理を言ってすまない。長距離の移動に耐えられそうなのを数名頼む」

 稽古場を出たレイノルドは、馬車までの道を足早に歩いた。

(自力で記憶を取り戻すのは無理か)

 ルクレツィアにルビエ公国で結婚式を挙げたいと言われ、国王が賛同していると聞いたレイノルドは、真っ先に一人の侍女を思い出した。

 マリアヴァーラ・ジステッド。
 またの名を〝高嶺の花〟。

 幾度となくレイノルドの前に姿を現す彼女は、たぶん自分の大切な人だった。

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