【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 ルビエ大公家は安泰かと思っていたが、意外と敵が多そうだ。

 氷の城の内部は暖かかった。
 薄い水色の国旗をかかげたエントランスには、現大公の肖像画がかけられている。

 その前には、ルクレツィアによく似た白髪を長く伸ばした青年が、手を後ろに組んで立っていた。
 首に下げたループタイには大きな青琥珀がついている。青年も大公家の一員のようだ。

 緊張するレイノルドの横で、ルクレツィアは姿勢を低くする。

「ジーンお兄様、ただいま戻りました」
「男連れで来るとはおみそれした」

 ギロリと殺意の高い視線がレイノルドに送られる。

(なんのつもりだ)

 初対面でそんな目で見られる覚えはないので睨み返しておいた。

「お兄様。こちらはタスティリヤ王国のレイノルド・フォン・タスティリヤ王子殿下です。私の結婚相手なので、失礼な態度は止めてください」

 焦り顔のルクレツィアを、ジーンは眉をひそめて蔑んだ。

「私に祝福しろとでも言うつもりか?」
「お父様に……ルビエ大公にご報告させてください。謁見を申し入れます。大公一族にはその権利がありますわ」

 ルクレツィアがブレスレットを掲げる。
 連なった青琥珀がきらめくのを見て、ジーンは忌々しそうに口を歪めた。

「部屋で待て。大公の指示は私が仰ぐ」


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