【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
「どういうことですか?」

 ミオとニアは顔を見合わせてから、そろりと話し出した。

「えっとね、あの二人は〝魔法使い解放運動〟のリーダーと参謀だったんだよ。大公は、娘のルクレツィア様がどうしてそんな活動をするのか理解できなかった。大公の飼い猫だった僕とニアは、ルクレツィア様を正気に戻せと命令されたんだ」

 だが失敗した。
 ミオもニアも、心の中では彼女の志に賛同する一人だったから、記憶を改竄することはできなかった。

 そこに、オースティンが助けに来たのだ。
 逃げる時間稼ぎに、彼はニアに魔法をかけた。

 そのせいでニアは猫に変わり、ミオともども城を追い出されたというわけである。

「ルクレツィアは魔法使いにも分けへだてなく優しい人だった。オースティンと逃げて、幸せに暮らしていると思っていたのに、どうして戻ってきちゃったんだろう……」

 悲しそうにミオはうつむいた。彼を慰めるようにニアが頬を撫でる。
 二人の様子に、ヘンリーもまた沈痛な面持ちで呟いた。

「マリアヴェーラちゃん。オレ、公女サマを勘違いしてた」
「わたくしもですわ」

 ルクレツィアは、ただの我がままな公女ではない。
 母国で虐げられる魔法使いを解放するために、安全な外国から舞い戻った戦士だ。

 彼女にとって、レイノルドは切り札なのだ。
 タスティリヤ王国の次期国王というカードで、どんな勝負を仕掛けるつもりだろう。

(レイノルド様を利用するなんて許せない。でも……)

 ミオ様とニア様の境遇を聞くと、ルクレツィアを単なる悪人扱いはできない。

(どうしたらいいのかしらね)

 マリアは、燃えさかる暖炉に視線を落として途方に暮れた。
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