【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 ◇◇◇


「ど、どうだった?」

 屋敷の玄関で待ちぼうけていたミオは、マリアとニアが乗った馬車が到着するなり外に走り出てきた。
 マリアは「全て計画通りですわ」と笑う。

「ミオ様に新たなお願いがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「何をしてほしいの?」

「魔法でコサージュを作ることは可能でしょうか。同じ色、同じ形の物を大量に作って配りたいのです」

「できるよ。といっても、魔法では金や宝石みたいな価値ある物は作れないんだ。僕が作れるのは、花とか動物とか自然の形のものだけ」
「では薔薇を。深紅の薔薇のコサージュをお願いします」

 不思議な依頼を、ミオはこころよく引き受けてくれた。
 マリアは、足下にお座りするニアにも声をかける。

「ニア様と魔法の猫のみなさんは、知りうるかぎり全ての魔法使いにそのコサージュを届けてください。やってくださいますか?」
「にゃあ」

 ニアの方は、マリアが何をしようとしているのかわかった様子だ。

(あとは、向こうが動き出すのを待つだけ)

 屋敷の玄関には、ループレヒトとダグラスが出てきてマリアを手招いている。
 二人ともエプロンを付けているから、今晩はおいしいものにありつけそうだ。

「お二人とも行きましょうか」

 腹が減ったは戦はできないと、マリアは、ミオと手をつないで仮住まいへ入っていった。


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