【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 ルーイは、剣を抜いて一足飛びでマリアに斬りかかる。
 剣聖の急襲に、近くにいたダグラスもミオも反応できなかった。

「っ!」

 攻撃に気づいたマリアは、自分めがけて振り下ろされる剣に目を見開いて硬直した。
 死を覚悟したマリアの前に、白銀の影がすべり込んできた。

 両手を広げ、体で剣を受け止めたのは――

「レイノルド様……?」

 目の前で上がる血しぶきを、マリアはぼう然と眺めた。

 衝撃的な光景は、スローモーションのようにゆっくり進んだ。

 ルーイとマリアの間に飛び込んだレイノルドは、肩から斜めに斬られた。
 赤い血がぶしゃりと吹き出す。
 体は、真後ろに傾ぐ。

 倒れた体を抱きとめて尻もちをついたマリアは、苦悶の表情を浮かべるレイノルドに必死に呼びかけた。

「レイノルド様、どうしてっ!」

 薄目を開けたレイノルドは、マリアの情けない泣き顔を見て小さく笑った。

「……あんたの泣き顔、久しぶりだな」

 吐息交じりの優しい声は、マリアを忘れてしまう前の彼の言葉だった。

 記憶が戻ったのか。
 確認する間もなくレイノルドは気を失ってしまう。

 マリアは血まみれの彼を抱きしめて、半狂乱で叫んだ。

「誰か、レイノルド様を助けて!」
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