【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 レイノルドは、名残惜しそうにマリアの指から手を離す。

「俺にもはめてくれ」

 差し出された左手の薬指に、今度はマリアが指輪を通した。
 手が大きいレイノルドは、指が長くて指輪も大きめだ。

 彼と自分のサイズ差に緊張して、指が震える。
 この大きな人を、自分はこれから支えられるのだろうか。

(弱気になってどうしたの、わたくし。やると言ったらやるのよ!)

 勢いよく指輪を押し込む。
 思いの外、スポッとはまってしまって、レイノルドが吹き出した。

「……あんた、そんなに過激だったか?」
「ち、違うんです。少し考えごとをしてしまって!」

 真っ赤になって言い訳すると、レイノルドは「考えごと?」と呟いた。
 そして不満そうに唇を尖らせて、ばっとヴェールを上げた。

「式の間は俺に集中しろ」
「んんっ!?」

 そのまま腰を引き寄せられたと思ったら、強く唇を重ねられた。
 噛みつくようなキスにびっくりして、マリアは目を白黒させる。

(誓いのキスは、司祭が合図をしてからだったはずでは!?)

 やきもちを焼いた男の前では、段取りなど無意味だったようだ。
 目を閉じたレイノルドは、手探りでマリアの顎を指ですくう。
 その間も、唇はくっついたままだ。

(し、しかも長すぎでは!!?)

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