【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 呼吸が苦しくなってきた。
 とんとんと胸を叩くと、名残惜しそうに唇が離れた。
 涙目で抗議してくるマリアに、レイノルドは意地悪な顔で笑いかける。

「俺だけ感じただろ?」
「~~~! それはそうですけれどっ」

 今日が初お披露目になる来賓も多いのに、出来る王太子妃という印象を与えるイメージ戦略は、完全に失敗だ。
 せめて式の間くらいは、王族に嫁ぐのにふさわしい完璧な〝高嶺の花〟を演じたかった。

「これでは、招待客の皆様の中でのわたくしの印象がボロボロですわ!」

 悔しそうなマリアに、レイノルドはくっくと喉で笑う。

「いいだろ。おすまししているより、あんたはそっちの方が可愛いんだから」
「可愛いだけで妃は務まりませんわ!」

 拳を握りしめて必死に反論するマリアの愛らしさに、招待客たちは彼女が入場してきた時とは別の意味で沸き立った。

「なんと可愛らしい方だ」
「タスティリヤの次期王妃にふさわしい」

 その声を聞きつけて、ミオとニアは嬉しくなった。

「マリアヴェーラ様はすごいね、ニア」
「にゃお」

 これがレイノルドの計画だったのかは不明だが、うっかりのぞいたマリアのかわいい本性が、招待客を魅了したのは言うまでもない。


             〈第三部 完〉
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