【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
◇ ◇ ◇
「おばあさま、ご機嫌はいかがですか?」
ミゼルが話しかけると、グレイヘアーをひとまとめにしてベッドに起き上がっていた祖母アマンダは、嬉しそうに顔をほころばせた。
「あなたの顔を見て元気が出ましたよ。よく来たわね、ミゼル」
チェック柄の布団をしいたベッドが祖母の定位置だ。
数年前に体調を崩してからほとんど寝たきりで、起きられる時はこうして老眼鏡をかけて、貴族たちから送られてきた手紙に返事を書いている。
ミゼルは持ってきたお見舞いのお菓子を使用人に渡して、ベッドの近くに置いてあったスツールに腰かけた。
「先に手紙でもお伝えしましたが、ヘンリー・トラデス子爵令息についてご相談したいのです。マリアヴェーラ様とレイノルド王子殿下が恋人だったことをお忘れになっています。記憶を呼び戻すいい方法はありませんか?」
魔法が使われたことは伏せると、祖母は眼鏡のつるをクイと押した。
「いい方法……そうね。物忘れはふとした瞬間に思い出すものだわ。じっくり待つのが得策だけど、びっくりさせたり氷で冷やしたり、頭に強い衝撃を与えるのもいいですよ」
「強い衝撃というと、どんな?」
「棒で殴るといいようですよ。以前、グノシス男爵が奥方との約束を忘れて他の女性とデートに出かけていたのを追及した時も効果てきめんだったわ。覚えていないと言っていたのが、火かき棒を取り出したらとたんに思い出したの」
面白そうに笑う祖母の横で、ミゼルは大まじめにメモを取った。
びっくりさせる。氷で冷やす。棒で殴る。
対ヘンリーでもできそうだ。
「他には何かありますか?」
「その前に。ミゼル、そのトラデス子爵令息とはどんな仲なのかしら。真夜中にベランダに這い上がってくるようなロマンチックな相手がいると聞いて、おばあさまはびっくりしたわよ」
「おばあさま、ご機嫌はいかがですか?」
ミゼルが話しかけると、グレイヘアーをひとまとめにしてベッドに起き上がっていた祖母アマンダは、嬉しそうに顔をほころばせた。
「あなたの顔を見て元気が出ましたよ。よく来たわね、ミゼル」
チェック柄の布団をしいたベッドが祖母の定位置だ。
数年前に体調を崩してからほとんど寝たきりで、起きられる時はこうして老眼鏡をかけて、貴族たちから送られてきた手紙に返事を書いている。
ミゼルは持ってきたお見舞いのお菓子を使用人に渡して、ベッドの近くに置いてあったスツールに腰かけた。
「先に手紙でもお伝えしましたが、ヘンリー・トラデス子爵令息についてご相談したいのです。マリアヴェーラ様とレイノルド王子殿下が恋人だったことをお忘れになっています。記憶を呼び戻すいい方法はありませんか?」
魔法が使われたことは伏せると、祖母は眼鏡のつるをクイと押した。
「いい方法……そうね。物忘れはふとした瞬間に思い出すものだわ。じっくり待つのが得策だけど、びっくりさせたり氷で冷やしたり、頭に強い衝撃を与えるのもいいですよ」
「強い衝撃というと、どんな?」
「棒で殴るといいようですよ。以前、グノシス男爵が奥方との約束を忘れて他の女性とデートに出かけていたのを追及した時も効果てきめんだったわ。覚えていないと言っていたのが、火かき棒を取り出したらとたんに思い出したの」
面白そうに笑う祖母の横で、ミゼルは大まじめにメモを取った。
びっくりさせる。氷で冷やす。棒で殴る。
対ヘンリーでもできそうだ。
「他には何かありますか?」
「その前に。ミゼル、そのトラデス子爵令息とはどんな仲なのかしら。真夜中にベランダに這い上がってくるようなロマンチックな相手がいると聞いて、おばあさまはびっくりしたわよ」