【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい

6話 二人の恋のはじめ方

 ミゼルは包帯を巻いたヘンリーを連れてマリアヴェーラに会いに行った。
 二人で伯爵家に帰ってきた後、その足で父の執務室へ向かう。

「お父様、お話があります」
「な、なんだい急に」

 怪我をした男を連れてやってきた娘の真剣な表情に、小心者の父はうろたえた。
 相手が王立騎士団の制服を着ているので余計にだ。

 ミゼルは、改めて父にヘンリーを紹介する。

「この方はヘンリー・トラデス子爵令息です。貴族学園では私と同年の卒業でした。王立騎士団に所属していて、現在はレイノルド王子殿下の護衛を務めておられます。ちなみに、頭の怪我は私が殴りました」
「ミゼルがやったのかい!?」

 父は椅子から飛び上がると、ヘンリーに向かって平謝りした。

「娘が申し訳ありません。トラデス子爵家にもお詫びを入れましょう」
「結構です。やったというより、やり返されたという方が正しいですし、怪我のことを親父に知られたら『騎士にあるまじき不覚』と殴られるんで。それに、見た目ほどたいしたことない怪我ですよ」

 空笑いするヘンリーに、ミゼルは大きく首を振った。

「たいしたことなくても怪我をさせたのには変わりありません。ですから私、責任を取ると決めました」

 ミゼルはまっすぐにヘンリーを見上げて、一世一代の思いを告げた。

「ヘンリー様、私と結婚してください」

< 444 / 446 >

この作品をシェア

pagetop