【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
「静かにしてろ。左斜め後ろにいる、青いジュストコールの男。あいつは、お前からアルフレッドを奪ったプリシラの従兄弟だ。スート商会の急成長は、ほぼこいつの手柄らしい」
「!」

 マリアの手に力が入った。

 スート商会といえば、タスティリヤ王国に『魔晶石』を流通させようとたくらんでいる会社だ。パーマシーが騙された投資話の元締めである。
 スート商会の取締役はプリシラの父親で、プリシラを通して第一王子アルフレッドを動かし、禁じられている魔法を解禁させようとしている。

 レイノルドに顔を向ける振りをして、そっと後ろをうかがうと、シャツの衿を胸元まではだけさせた男性が、化粧の濃い美人を両脇にはべらせていた。

「ここで派手に負ければ、あちらから話しかけてくる。いい投資話がある、今の負けを取り戻して見ないか、と」
「それが目的でしたのね」

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