【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 彼女と並んで祈っているあいだ、レイノルドは気が気ではなかった。

 バクバクとうるさい心臓の音が聞こえていないだろうか。
 ただの婚約者の弟らしく振る舞えているだろうか。
 兄の婚約者に、弟が恋をしていると、誰かに気づかれないだろうか。

(気づかないで)

 レイノルドは、ハートの木にそれだけを祈った。
 兄と彼女の恋なんて、もはやどうだって良かった。

 この身に秘めた恋心だけを守って生きていければ、それでいい。兄に誉められなくても、国王に気にされなくても、側近の口が悪くたって知るものか。

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