【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 質素な馬車にのりこんでスカーフを外し、握りしめて窓の外を見る。
 穏やかな陽気に包まれた平和な国は、魔法が解禁されたらどんな風になってしまうのだろう。

「――レイノルド様。アルフレッド様とプリシラ嬢の婚約式典に、第二王子として招待されておいでですわね?」
「当然。国王も王妃も宰相も、この国で重要な人間はみんな出席する。あんたの父親であるジステッド公爵も来るはずだ。それがどうした?」
「わたくしも同席してよろしいかしら。第二王子から求婚を受けている者として、見劣りしない自信はありますわ」

 覚悟は決まった。高嶺の花としての人生に、ここで終止符を打とう。派手に咲いた大輪は見事に散るのが相場である。
 大きな花びらがヒラヒラと落ちていくように、マリアヴェーラ・ジステッドという公爵令嬢も散るときが来たのだ。

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