【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい

2話 なけなしの代替求婚

 アルフレッドとプリシラが出会ったのは、学園の温室だった。一年に一度しか咲かない南国の大輪が花ひらいたと聞いて、マリアの方から誘ったのだ。

 第一王子とその婚約者である『高嶺の花』が温室を訪れる噂は学園中にひろまり、人払いをしなくても誰も近づかなかった。
 爵位を金で買った成り金の娘で、下流クラスで孤立していたプリシラ以外は。

 白い花々が咲きそろう花壇に腰かけて、指先にとまった小鳥に歌を聴かせていたプリシラは、やってきたマリアとアルフレッドを見るなり顔を青くした。

『お邪魔してすみません。お二人がいらっしゃるとは知らなかったんです。元庶民であるわたしは、やんごとなき家柄のクラスメイトから無視されていて、大事なことを教えてもらえないので……」

 大きな瞳からほろりと落ちた涙は、葉先に垂れた朝露のように清らかだった。
 女の涙はみっともないと教育されていたマリアでさえ、庇護欲をかき立てられた。

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