私だけの特別な時間。
少し高めの声。
男性にしては低めの身長。
黒縁メガネがよく似合う、童顔の男性。
思わず立ち止まって、その男性をじっと見れば……スーツを着ていることに気づいて。
生徒ではなく、先生だとわかった。
「亜美(あみ)早くー」
友だちに呼ばれて、はっと我に返ってすぐに私は職員室のコピー機があるほうへと向かう。
私は吹奏楽部に所属していて、春休みにも部活があるから学校に来ているところ。
部内で使う楽譜をコピーしに来た時に、その先生を偶然見た。
あの先生は今まで見たことのない人だから、4月からこの学校に着任する先生だろう。
「ねぇ、今の先生見た?超かっこよくない?」
楽譜をコピーしながら、小声で話す。
「確かにかっこよかったね。あ!まさか亜美、あの先生のこと好きになっちゃった?」
「まさか~」
あはは、と笑った私。
でも、本当は──今の一瞬で、私は先生を好きになってしまったのだった。
いわゆる、一目惚れっていうやつ。
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