むすんで、ひらいて、恋をして
莉生の手にしているのは、大きなボストンバック。



そっか、莉生、洋服を取りに帰って来たんだ……。



「莉生、……家を出るつもりなの?」



声が、震える。



聞きたいことがいっぱいあるのに、それ以上の言葉が出てこない。




「……まだ、わかんないけど」




「何も変わらないって言ってたのに、どうして?」




しばらくじっと見つめ合って、ゆっくりと莉生が口を開く。




「どうして俺が家を出るのか、知りたい?」




じっと莉生を見つめて、『うん』っと答えるはずの唇が、




つぎの瞬間、莉生の唇にふさがれた。



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