なないろ。-short stories-
飛び立ったところは雪景色だったのに、降り立ったところは太陽が照りつける観光都市であるメルボルンだった。
海辺に立ち並ぶ高級ホテルのまわりには熱帯植物が溢れ、桟橋にはクルーズ船が係留されている。
「ハワイみたい!」
そんなお姉ちゃんの声がどこか遠く聞こえた気がした。
一般の人から見ればリゾート地に見えるこの街も私には呪われた街のように思える。何もかも、2年前と同じだ。2年の間に季節は移り変わり、また冬が戻ってきた。
ホテルでの夕食の後、自分の部屋のベッドに寝ころび、天井を見上げてぼんやりしていた。
2年前に来た時は、翔生くんが一緒にいて、高校の留学プログラムで二人でホームステイをしたっけ。
初めてメルボルンに足を踏み入れたとき、こんなにも美しい街があるのかと感動した。
何を見ても珍しくて、新鮮だった。
でもそれは多分、私が見ていたものを翔生くんも一緒に見ていたからだと思う。
今はどんなものを見ても、何も感じない。