なないろ。-short stories-




遠出をして、アリススプリングスに行って見た、夕陽に染まるエアーズロックでも。
小さい頃からずっと、実は今も夢見ているブロードウェイでも。
アラスカで見るオーロラでも。

世界中、美しいと称される場所どこへ行っても同じことだと思う。

どんなに雄大な景色にも心は動かないし、どんなに美しい光景も、私の心を楽しませてはくれない。

たった2年。傍から見れば “2年も” なのかもしれないけれど。私にとっては2年という短い間に、不幸にも一人の男の子がもう二度と目を開けることなく、今この瞬間にも病院のベッドに横たわっている。

何十億という数の人類から見れば、絶対に気にも留めないくらい些細なことのはずだ。

でも私にとって翔生くんを失うも同然という出来事が起こったのは、この世のどんな苦しみよりも刃となって私の胸を引き裂いた。

何も見ない、何も聞かない、何も感じない。

これまでの2年も、これからもずっと。そんなつまらない人間として人生を歩んでいくのかもしれない。



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