なないろ。-short stories-
「瑞香、何はりきってんの、これからデート?」
隣の家に住む幼なじみの李星が窓を開けて声をかけてきた。
保育園からずっと一緒、しかも今年に至っては同じクラスで席は前後という腐れ縁。
「ん?そうだよ、翼紗くんが今日は特別な日だからって、デート誘ってくれたの!」
ニコッと笑って返したらなぜか一瞬だけ、李星の表情がつらそうに歪んだ。
「なぁ、その格好、全部アイツのため?」
いつもはクラスの中心にいて冗談を飛ばしてる李星からは想像もできないくらい弱々しくて、かすれた声。
「っ…ごめん、なんでもない…忘れて」
“たんじょーびおめでと“ そう一言残して李星は自分の部屋に姿を消した。
え、何今の。っていうかプレゼントなし?!いや、本来プレゼントって欲しがるものじゃないけど…今までは毎年、朝イチでくれてたのに。
そんなモヤモヤを抱えながら待ち合わせ場所に向かった。