7歳の侯爵夫人
晩餐を終えて、オレリアンは妻を女主人の部屋へ送る。

「今日はずっと馬車に乗っていて疲れただろう?早くお(やす)み」
そう言うと、彼はコンスタンスの頭を撫でた。

「…旦那様は?ここで寝ないの?」
キョトンと見上げるコンスタンスに、オレリアンは目を細め、困ったように微笑んだ。
「私は自分の部屋で寝るよ。ここは貴女の部屋だからね。ゆっくりお休み」
オレリアンはコンスタンスの髪を一房手に取り、その先に口付けた。
しかしコンスタンスは不満気に彼を見上げている。

「…どうしたの?私のお姫様はご機嫌ななめなのかな?」
「どうして寝るお部屋が別々なの?夫婦は一緒に寝るんじゃないの?」

コンスタンスの問いに、オレリアンはさらに困ったように眉間に皺を寄せた。
「うーん。夫婦とは言っても貴女はまだ子供だからね」
「でも旦那様と私は夫婦でしょ?お父様とお母様だって一緒に同じお部屋で寝ているわ」
困りきったオレリアンは、助けを求めるように後ろを振り返った。
彼の後ろには、護衛のダレルとコンスタンスの侍女リアが控えている。
だがダレルは笑いを堪えるように口を押さえて明後日の方向を向き、リアは呆れたような顔で2人を眺めている。

コンスタンスは両手でオレリアンの右手首を掴んだ。
「ね?いいでしょ?旦那様」
上目遣いに小首を傾げるコンスタンスは爆発的に可愛い。
オレリアンは白旗を上げ、
「じゃあ、貴女が眠るまで一緒にいよう」
などと誰に言うともつかぬ言い訳をしながらコンスタンスと寝室に入って行った。
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