7歳の侯爵夫人
「……ん?」
ふと目をやった先に、抱き上げた妻の爪先が見えた。

「血がついてるよ?切ったんじゃないのか?」
オレリアンは妻を芝生の上に降ろすと、座らせて、足首を持ち上げた。
「キャッ!」
スカートの裾が捲れ上がり、コンスタンスが小さく叫び声を上げる。
すると、近くで控えていたリアが血相を変えて走り寄って来た。

「旦那様!淑女に何をなさいます!」
主人の前に立ちはだかろうとするリアを、オレリアンは胡乱な目で見上げた。
そして、妻の爪先にそっと触れる。

「痛っ!」
コンスタンスが眉をひそめると、オレリアンは苦笑した。
「見てごらん、リア。これが淑女の足?」
「まぁ」
「裸足で庭を走り回ってるから、石か草で切ったんだろう」
リアは主人の血の付いた足先を確認すると、ため息をついて2人から離れて行った。
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