7歳の侯爵夫人
2人は国策で引き裂かれたと言っても過言ではないのだから、余計に想いが残るのは当たり前と言えば当たり前なのだろう。
だが…。

「殿下は思い違いをされています。たしかに最初は王命で結ばれた私たちではありますが、今は互いに想い合い、自分たちの意思で共にあります。殿下がご憂慮されることは、何一つないのです」

そう言ってオレリアンはフィリップを見上げた。
しかしフィリップは薄く笑う。

「それはおかしいな、ヒース侯爵。そなたは1年もの間、妻を自領に閉じ込めたまま会いに行かなかったと報告を受けている」
「それは…」
オレリアンは思わず口を噤んだ。
フィリップはヒース侯爵夫妻について調べあげた上で来ているのだろう。
うっかりしたことを言えばきっとそれを突かれる。

たしかに最初の1年間、コンスタンスを遠ざけ、敢えて夫婦としての生活を送って来なかったのは自分だ。
しかし今は、心の底から彼女を愛し、生涯共にありたいと願っているのに。
黙ってしまったオレリアンを睨み、フィリップが続ける。

「コニーと私は10年間に及ぶ婚約期間があった。その間婚約者として愛を育み、信頼関係を築いてきたんだ。私はずっと、コニーと手を携えて歩いていくものだと思っていた。彼女の手を離すつもりなど、これっぽっちもなかったんだ…。例え側妃ではあっても、私はコニーを愛し、慈しむと誓える。夫に捨て置かれる侯爵夫人でいるよりずっと幸せにしてやれると思う」
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