7歳の侯爵夫人
「…どういうことだ?」
後ろから低い男の声が聞こえ、コンスタンスは振り返った。
そしてフィリップの姿を見とめると、弾かれたようにオレリアンの背中に回り、フィリップから身を隠すようにこちらを伺う。
「ごめんなさい…。本当にお客様だったのね…」

フィリップは驚愕に言葉を失った。
フィリップの知っているコンスタンスは、こんな子供っぽい話し方をしないし、こんな失礼なことをする女性ではない。

一方、絶句し、目を見開いて自分を凝視する見知らぬ男に、コンスタンスは怯えた。
「私…、お父様やお兄様が、オレールをいじめに来たのかと思って…」
オレリアンの後ろから顔を半分だけ出して話すコンスタンスに、フィリップは言葉を失ったまま。
コンスタンスはどうしていいのかわからずオレリアンの背中にしがみつくと、夫は振り返って優しく妻を見下ろした。

「コニー、私を助けに来てくれたのか?」
コンスタンスは力強く頷く。
リアからオレリアンは来客中だと聞きはしたが、こんな夜中に突然来るような客は、てっきり父か兄だと思ったのである。
昨日コンスタンスがヒース侯爵邸で暮らすのを許しはしたが、気が変わって迎えに来たとか、オレリアンを罵りに来たのかと。
だったらコンスタンスは夫を守るため、父と兄にあらためて『オレールと一緒にいたい』ことを訴えに行かなければならない!と。
< 162 / 342 >

この作品をシェア

pagetop