7歳の侯爵夫人
一方オレリアンは、コンスタンスを寝かしつけた後執務室に戻り、妻の侍女であるリアを呼びつけていた。
「フィルは…、フィリップ殿下の愛称だったのだな」
そう言って寂しげに笑うオレリアンに、リアは困ったように目を伏せた。
ルーデル公爵邸で妻が飼っている愛犬の名前は、『フィル』だった。
あの名前は、婚約者であった王太子からとったのだ。
今の今までそのことに思い至らなかった自分が鈍すぎて、なんだか笑えてくる。
「あの犬は…、奥様が12歳の誕生日に、フィリップ殿下から贈られたのです。その頃からお互いの勉強がさらに忙しくなり、会えない時間が多いけど寂しくないように、と」
「自分の代わりに側に置いて可愛がれ…ということか?」
「…今の奥様は覚えておりません。それより今は、旦那様がフィルのために玩具を買って来てくださったり、一緒に遊んでくださったりしたことの方が良い思い出となっておりましょう」
「ありがとう、リア」
礼を言われ、リアはハッとした。
いつの間にか、オレリアンを慰めるような言葉を口にしていた。
この男は主人を悲しませるだけの存在と、とことん嫌っていたはずだったのに。
「フィルは…、フィリップ殿下の愛称だったのだな」
そう言って寂しげに笑うオレリアンに、リアは困ったように目を伏せた。
ルーデル公爵邸で妻が飼っている愛犬の名前は、『フィル』だった。
あの名前は、婚約者であった王太子からとったのだ。
今の今までそのことに思い至らなかった自分が鈍すぎて、なんだか笑えてくる。
「あの犬は…、奥様が12歳の誕生日に、フィリップ殿下から贈られたのです。その頃からお互いの勉強がさらに忙しくなり、会えない時間が多いけど寂しくないように、と」
「自分の代わりに側に置いて可愛がれ…ということか?」
「…今の奥様は覚えておりません。それより今は、旦那様がフィルのために玩具を買って来てくださったり、一緒に遊んでくださったりしたことの方が良い思い出となっておりましょう」
「ありがとう、リア」
礼を言われ、リアはハッとした。
いつの間にか、オレリアンを慰めるような言葉を口にしていた。
この男は主人を悲しませるだけの存在と、とことん嫌っていたはずだったのに。