7歳の侯爵夫人

11

デートを途中で切り上げて帰宅したコンスタンスは、たいそうご立腹だった。

「もっと色んなお店が見たかったのに…」
「また連れてってあげるよ」
「いつ?明日?明後日?」
「…コニー…」
オレリアンは少し困ったように苦笑した。
こういうところが、やはり幼い少女だと思う。

本当はなんだって叶えてやりたいが、オレリアンだって仕事の都合があるし、何より、王太子の成婚ムードで賑わう街に、もう連れて行きたくはないのだ。
実際、成婚式の日がもっと近づけば、地方から人が押し寄せたりして街は混雑するし、その分治安だって悪くなるだろう。

「街は今混雑してるし、もう少し経ってからにしよう」
そう伝えると、コンスタンスは頬を膨らませた。

「じゃあパレードは?見に連れてってくれる?」
それにも、オレリアンは困って眉尻を下げた。

「俺はその日仕事があるんだよ」
近衛騎士であるオレリアンは、その日は王太子の成婚式の警護やパレードの先導をしなくてはならない。

「お休みできないの?」
「無理だよ、コニー」

騎士の一番大事だとも言える任務を、休めるわけがない。

「じゃあリアと行くわ」
「ダメだよコニー。危ないだろう?」
コンスタンスの頬はさらにぷうっと膨れた。
大きな瞳には、今にも溢れそうに涙が溜まっている。
< 188 / 342 >

この作品をシェア

pagetop