7歳の侯爵夫人
最初の半月は家族や侍女たちともほとんど言葉を交わさず、部屋に引きこもっていた。
当然夫の存在も忘れていたし、時々誰かと話をしても、彼の名前が上がることも全くなかった。

そして次の半月で、コンスタンスは自分の中で16歳になっていた。
一緒にお祝いしてくれるはずだったフィリップはそばに居ないし、本当の誕生日はもう少し先らしいのだが。
しかもその時、自分は20歳になるという。

混乱と、慟哭の1ヶ月間であった。


だが、この1ヶ月で彼女は、少しずつ、少しずつではあるが、なんとかこの事実を受け止め、この哀しみから這い出そうともしていた。
本来の彼女は、私を捨て、公のために生きるよう教育されてきた人間である。
フィリップが隣国との縁談を受け入れてコンスタンスとの婚約を解消したのは全て国のため。
だったら、やがて王妃になり国に殉ずる覚悟だったコンスタンスも、それに従い、受け入れなくてはならない。

フィリップを1人の男として愛し、恋愛対象として見ていたからこんなに辛いのだ。
そもそもフィリップとコンスタンスの婚約だって、国のためだったのに。
あんなに、いつも凜として貴婦人の模範であれ、と教育されてきたのに、恋に惑わされるとはなんて愚かなことだろう。
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