7歳の侯爵夫人
「お父様、私、なんだかとっても腹が立ってきましたわ」
コンスタンスは顔を上げ、父を真っ直ぐに見据えた。

「コニー…?」
コンスタンスの反応が思っていたものと違い、公爵は思わず目を丸くした。

てっきり、打ちひしがれ、泣き出すのではないかと思っていたのだ。
だがコンスタンスの目は力強い輝きを放っていた。

「今の話を聞いて、なんだか吹っ切れました。私は大事な少女期をお妃教育で無駄にされた挙句捨てられ、今度は妾に召し上げられそうになっている…、そういうことですよね?」
「コニー…」
コンスタンスのしっかりとした口調に、父、母、兄の目に喜色が浮かぶ。

「もし本当にそんなことをお考えなら、私と、我がルーデル公爵家を愚弄するものですわ」
「ああ、その通りだ」
「お父様、お母様、お兄様、今まで御心配おかけして申し訳ありませんでした。私はもう大丈夫ですわ。今のお話を聞いてすっかり目が覚めました。私後日、王宮に行って参ります。そして、記憶を失っていることを悟られずに王妃様にお会いし、金輪際心配はご無用と告げて参りますわ」

「コニー!」
公爵夫人はギュウッと娘を抱きしめた。

「お茶会には、母も一緒に行きますからね!」
「よし!私は護衛としてついて行こう」
と兄エリアス。

「だがもしかしたら…、王宮に行けばフィリップ殿下にもお会いするかもしれないぞ」
「望むところですわ。殿下にお会いして、きっちりとお断りして参りましょう」
そう言うと、コンスタンスは父に向かって笑って見せた。

もうとうに、フィリップとの赤い糸は切れていたのだ。
いい加減、前を向かなくてはいけないのだろうと思う。
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