7歳の侯爵夫人

2

「なんだか…、この門、見覚えがあるような気がするわ」

ヒース侯爵邸に向かう馬車の窓から外を眺めていたコンスタンスが、ポツリと呟いた。
「…そうか?」
向かいに座るエリアスはハッとしたが、あえてそれ以上言わなかった。
馬車はちょうどヒース侯爵邸の門の前に差し掛かったところだったからだ。

そこは、コンスタンスが事故に遭った場所でもあり、数ヶ月住んだ邸でもある。
だが、15歳までのコンスタンスが全く通ったことが無い道でもなく、見覚えがあってもおかしくはなかった。

「頭痛は大丈夫か?」
「ええ。今は大丈夫です」

侯爵邸を目にしても妹に変化はなく、エリアスはホッと安堵の溜息をついた。
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