7歳の侯爵夫人
オレリアンに案内されて王宮の回廊を進むと、王妃付きの侍女があらわれた。
「ルーデル公爵夫人と令息はこちらでお待ちください。ここから先はヒース侯爵夫人お一人でとのことでございます」
母とエリアスには、手前の部屋で待っているようにと言うのだ。
「王妃様は、最初はヒース侯爵夫人とお二人で会われることを希望されています。どうぞお二人は、こちらでお待ちください」
「まぁ…」
母は一緒にお茶会に参加するつもりでここまで来たが、王妃が待つよう言っているのでは仕方がない。
兄エリアスも、心配そうな顔を向ける。
「大丈夫ですわ、お母様、お兄様」
コンスタンスは母を安心させるように手を握り、笑顔を見せた。

少し進むと、今度は侍女が、オレリアンにも
「騎士の方もここまでで」
と言う。
しかしオレリアンは首を横に振った。
「私は護衛として付いて参ります。もちろん部屋の前で待機しておりますゆえ」
「いいえ。この先は後宮でございます。皇族と禁裏護衛騎士以外、男性は何人たりとも入れません」
そう告げると侍女は冷ややかにオレリアンを見上げた。

「後宮…」
オレリアンは絶句した。
いかに近衛騎士と言えど、後宮に足を踏み入れることは出来ない。

「大丈夫ですわ、オレリアン様」
不安気に妻を見下ろす夫を、コンスタンスは笑顔で見上げた。
「私が幸せだとわかれば、王妃様も満足してくださるでしょう。帰ったら、お約束を守ってくださいませね」

王宮から戻ったら、同居する約束をしているのだ。
2人の間には今、信頼と、たしかな絆が育ち始めている。

「ええ、もちろん」
オレリアンは妻の手を取り、その甲に口付けを落とした。

「では、行って参りますわ」
コンスタンスはニッコリ笑うと、夫に背を向けた。
そして侍女の後に続き、後宮へ入って行った。
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