7歳の侯爵夫人

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今や目の前で優雅にお茶を飲む王妃に対する尊敬や思慕の念は、もうすっかりコンスタンスの中から消え去っていた。
結局は、王妃にとって大事なのはフィリップと自分だけなのである。

王妃の自分勝手な話を聞いて、コンスタンスは理解した。
コンスタンスを後宮に迎えることは、つまり、王太子妃となった隣国の王女への当てつけなのである。
王妃は大国から嫁入りして義母を敬わないような嫁が気に入らず、自分に従順であったコンスタンスを側に置きたいのだ。
長年婚約者であったコンスタンスを後宮に迎えて、王太子妃を牽制するために。

そして王妃がコンスタンスに拘るのは、おそらくコンスタンス自身にというより、母の言うとおり初恋相手の娘だからなのかもしれない。
それは、手に入らなかった玩具を欲しがる子供のようなものだ。

国でトップの女性になった王妃は、なんでも自分の思い通りになるとでも思っているのだろう。
それが唯一思い通りにならなかったのが、王太子と隣国の王女の結婚なのだ。
そこで、王女を牽制するために思いついたのがコンスタンスを後宮に召しあげることなのかもしれないが、それだって、ある意味自分を顧みなかった初恋相手への復讐にもなるかもしれない。
『正妃』ではなく、『寵姫』なのだから。

『寵姫』…、要するに、公的には何の力も持たない、王太子の妾である。
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