7歳の侯爵夫人
「先日…、君がヒース侯爵を慕うのを見て、血が逆流するかと思うほど衝撃を受けたよ。やはり私は、君がいないとダメみたいだ。コニー、どうか、私の側にいてはくれないか?」
フィリップは指を滑らせ、彼女の頬に触れる。

「それは…、私に妾になれということですか?」
コンスタンスはフィリップの目を真っ直ぐ見据えたままたずねた。

「違う。そうではなく、私の恋人として」
「でも殿下には正妃様がおられるのです。言い方は違っても、結局私は妾ということでしょう?」
「正妃はいても、私の一番は君だ、コニー」

コンスタンスは悲し気に笑った。
そして、優しくフィリップの手を外した。

「殿下、今日お会い出来て良かったです。自分の気持ちに区切りをつけることが出来ましたから。私のお慕いしていた殿下はもっと誠実な方でした。以前の殿下なら、決して私に妾になれなどとおっしゃらなかった。私の婚約者だったフィリップ殿下はもうどこにもいないのだと、はっきりとわかりました。私が言うのは烏滸がましいですが…、殿下、どうかお妃さまを大切にしてくださいませ」

コンスタンスは今、漸く憑き物が落ちたような気がした。
『王太子が自分を妾に望んでいる』
それは、両親や兄から聞いて覚悟はしていたが、自分の耳で聞き、今はっきりと理解したのだ。
いくら未来の国王でも、いくら長年想っていた相手でも、妾になるのはごめんである。
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