7歳の侯爵夫人

6

王太子はコンスタンスの手を離さない。
寧ろ、先程より力強く握られ、コンスタンスは困惑した。

「ダメだコニー。私は君と離れてからはっきりと自覚したんだ。私はやっぱり君が好きだ。思い出してくれ、コニー。私たちは10年もの長い間、お互いを信頼し、慈しみ合って時を重ねて来たんだ。どうか、どうかこの先も私の側にいてくれないか?」

今にも泣き出しそうな悲痛な顔で懇願する王太子を見て、心が揺れないわけがない。
そう、嬉しくないはずがないのだ。
ずっと慕ってきた、言うなれば初恋の人に告白されたのだから。
本当ならその手を取って、抱き合って、連れ去って欲しいとさえ思うだろう。
でも…。

オレリアンの、春の陽射しのような、穏やかに微笑む姿が目に浮かぶ。
たった半月の触れ合いしかないが、彼の妻として、彼に寄り添って生きていこうと決めたのだ。

(私はあの方を裏切るなんて出来ない…)
コンスタンスは目をギュッと瞑り、そして開くと、王太子を真っ直ぐに見据えた。
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