7歳の侯爵夫人
「コニーよ」

「…え?」

「お父様もお母様もお兄様も。私の周りの人はみんな私をコニーって呼ぶの。旦那様もそう呼んでいたんでしょう?」

オレリアンを見つめ、コンスタンスは可愛らしく首を傾げた。

いつも贈り物をしてくれて、自分に会いたいと通ってくる夫と仲が悪かったはずがない。
きっと睦じい夫婦だったのだろうに、両親や兄は何か行き違いがあって夫を拒んでいるのだろう…、と、コンスタンスはそう思っている。

「…コニー…」
オレリアンが囁くようにそう呼ぶと、コンスタンスは花が綻ぶように笑った。

その可愛らしい笑顔に、オレリアンの目が釘付けになる。

「…コニー…」
もう一度名を呼んだオレリアンがコンスタンスの髪に触れようとした時、
「お嬢様!」
と叫ぶ女性の声が聞こえてきた。
見れば、コンスタンス付きの侍女リアが息を切らして走って来る。
コンスタンスの目が、行き場をなくして戻っていくオレリアンの指を残念そうに追う。

「…残念だけど、今日はこれで許してあげるわ、旦那様。でも次に来た時は絶対に遊んでね。約束よ」
オレリアンはコンスタンスに指切りをされ、その場は解放された。

指切りした小指は熱を持ち、オレリアンの胸をあたたかくさせた。
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