7歳の侯爵夫人

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エリアスはオレリアンを応接間に通して両親を呼ぶと、仕方なくコンスタンスも同席させた。
ずっと拒み続けてはきたものの、今はまだコンスタンスはオレリアンの妻であり、妻に対する権利は夫の方に分がある。
いつまでもこうして拒否するだけではいけないと、公爵側もそれをわかってはいたのだ。

公爵夫妻とエリアスを前に、オレリアンは
「どうか私に2ヶ月だけ時間をいただきたい」
と頭を下げた。
騎士団に長期の休暇を申し入れ、侯爵領へ赴く…、そこにコンスタンスを伴いたいと言うのだ。

侯爵領は、結婚以来1年間、コンスタンスが暮らしていた場所である。
記憶はなくとも馴染んだ地であれば過ごしやすいだろうから、そこで夫婦として再出発したいのだと。

当然のごとく、公爵夫妻も兄エリアスも断固拒否した。
そもそも記憶のないコンスタンスと夫婦をやり直す必要は無いと。
だいいち、彼女はまだ幼い少女同然なのだから。

「確かに夫婦と言うのには語弊があります。しかし私は、コンスタンスに妻としての役目を果たして欲しいわけではありません。ただ、コンスタンスが記憶を取り戻すまで…、いや、記憶を取り戻す手伝いをさせていただきたいのです。そしてもし許していただけるなら、彼女が、年相応に成長する過程を、側で、保護者として見守らせていただきたいのです。侯爵領で一緒に過ごし、それでもやはり彼女が実家に戻りたいと言うなら、その時は必ずお返し致します。どうか、結婚以来酷い夫であった私に償いをさせてください」

オレリアンは真摯に訴えた。
この1年、いくら王命での政略結婚とはいえ、妻を領地に放置したまま歩み寄る努力もしなかった。
それを今、激しく後悔しているのだ。

記憶が戻らないならそれでいい。
寧ろ、戻らない方が彼女にとってはいいかもしれない。
たがらただ、今の彼女を、守らせて欲しいのだ。
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