7歳の侯爵夫人
◇◇◇

4年前ー。
俺が後に妻となるコンスタンスを初めて見たのは、近衛騎士として王宮の警護に当たっていた時だった。

国王の即位10周年記念の舞踏会が開かれており、王太子であるフィリップ殿下は婚約者を伴って出席していた。
当時15歳の、ルーデル公爵令嬢コンスタンスである。

王族特有の銀髪に翠眼の王太子に、やはり少なからず王族の血が流れている公爵令嬢。
若く美しい2人は当然のごとくその日の主役で、衆人の注目を集めていた。

王太子の傍らで凛と立ち、優雅な微笑みを浮かべている婚約者は、この後王太子妃となり、王妃となり、ああして一生他人の目を浴びて生きていくのだろう。

(大変だな…)
他人事(ひとごと)ながら、そんな風に思ったのを覚えている。

ただ、気の毒とは思わなかった。
王太子と婚約者が、互いに想い合い、慈しみ合っているだろうことは、2人の様子から十分にうかがえたからだ。

優秀と誉高い王太子と完璧な淑女である公爵令嬢が手を携え、引っ張っていってくれるなら、この国の未来は明るい…と、参加している貴族は皆思っていることだろう。
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