7歳の侯爵夫人
「新妻を1年近くも領地に放置し、手紙も寄こさず、いたわりの言葉さえ無いとは何事ですか!」
それがマテオの言い分だった。

うん、いちいちもっともな意見だと思う。
俺の背後で、ダレルも苦笑している。

俺は執務室で向かい合って座り、マテオに説教されていた。
マテオの隣には彼の長男で、執事見習いのセイも座っている。
セイはマテオよりも王都と領地の間を頻繁に移動し、連絡係的役割も果たしていた。

ところで義母カレンは、朝から侍女を伴い、またどこかへ出かけているらしい。

「主人のプライベートなことと、私は今まで口を挟まず我慢して参りました。旦那様にだって、人に言われぬ複雑な想いもあったことでしょう。でもあなたは一体、いつまでそうして悲劇のヒーローみたいな顔をなさっているのですか?」

マテオに苦言を呈され、俺は眉をひそめた。
言われていることはわかるが、俺は別に悲劇のヒーローぶっているつもりはない。

「私は1年近く奥様にお仕えし、素晴らしい方であると尊敬しております」

まぁ、彼女が素晴らしい女性であることは俺だって知っている。
何せ彼女は10年近くもお妃教育を受けた貴婦人なのだから。
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